広島を訪れると、単なる観光旅行では済まされない感情が湧き上がる。厳島神社の壮大な美しさ、路面電車が走るレトロな街並み、美味しい牡蠣やお好み焼き――確かに観光地としても魅力的な場所だ。しかし、それ以上にこの街は「過去を知る旅」の場であり、平和とは何か、戦争がもたらしたものとは何かを、自らの足で歩き、目で見て、肌で感じることができる場所でもある。
2日目の広島観光は、そんな「知る旅」にふさわしい1日だった。
1日目のレポートはこちら
🌅 朝の静寂とともに訪れた原爆ドーム
目覚めたのは、広島の静かな朝。昨日の宮島観光とは打って変わって、今日は広島の歴史に深く触れる日。
まず向かったのは、原爆ドーム。昨日とは違う、どこか緊張した気持ちで足を運んだ。

朝の澄んだ空気の中、ドームの前に立つと、その存在感に息をのむ。半壊した建物は、まるで時間が止まったかのように、当時の惨状をそのまま伝えている。瓦礫のまま残されたレンガの壁、歪んだ鉄骨。その一つひとつが、あの日、この場所で何が起きたのかを無言のうちに語っているようだった。
周囲には観光客も多く、写真を撮る人々の姿がある。ただ、その中に楽しげな笑顔で撮影する外国人観光客を見かけたとき、胸がざわついた。彼らに悪気はないのだろう。でも、ここは単なる観光名所ではない。この場所が持つ意味を、どれほどの人が理解しているのだろうか。
🕊 平和記念公園の記念館で目にした“戦争の現実”
そのまま足を進めて、広島平和記念資料館へ。

館内に一歩足を踏み入れると、空気が変わった。どこからか、すすり泣く声が聞こえる。壁には、あの日の広島の姿が写真とともに並び、展示されているのは焦げた衣服、黒く焼けた弁当箱、影だけを残した石段。
「生き残った人々が見た地獄」と言われる、被爆直後の街のジオラマが目に入った瞬間、言葉を失った。
建物が崩れ落ち、黒い煙が立ち上り、焼け焦げた人々がさまよう。その惨状を目の当たりにすると、教科書で読んだ「戦争の悲惨さ」が、遥かに現実味を帯びて押し寄せてくる。
“なぜ、こんなことが起きたのか。”
「戦争は愚かだ」と、言葉にするのは簡単だ。でも、ここで見たものは、そんな単純な一言では済ませられない現実だった。被爆した人々の手記を読めば読むほど、その無念と、戦争というものがもたらした絶望の深さを思い知らされる。
展示を見終わったあと、しばらく言葉が出なかった。戦争は終わったはずなのに、なぜか今もなお、人間は同じ過ちを繰り返しているように思えてならない。
🏯 広島城と歴史の流れ
戦争の悲劇を目の当たりにしたあとは、少し気持ちを落ち着かせるために広島城へ向かった。
かつて毛利輝元が築城し、その後浅野家が統治していた広島城。立派な天守閣がそびえるが、実は原爆で倒壊し、戦後再建されたものだという。

「ここも戦争の影響を受けた場所なんだな……」
広島城の展示では、江戸時代の広島の発展とともに、広島が軍都として機能していた歴史も学べる。江戸時代から明治、大正、昭和へと移り変わる歴史の流れの中で、戦争がどれだけ多くのものを変え、奪っていったのかを改めて感じた。
⚓ 戦艦大和の遺産、大和ミュージアム
午後は車を走らせて呉市へ。目的地は大和ミュージアム。
かつて日本が誇る世界最大の戦艦「大和」を建造した街であり、戦時中は日本海軍の一大拠点だった場所。館内に入ると、まず目に飛び込んでくるのは、10分の1スケールの戦艦大和の模型。その巨大さに圧倒される。
「こんなものを作って、戦争に勝てると思っていたのか……」
戦艦大和は、日本の技術の粋を集めた戦艦だったが、実際にはほとんど活躍の場がなく、最後は沖縄へ向かう特攻作戦で沈められた。その過程を知ると、技術の進歩が必ずしも“強さ”に直結しないことがよく分かる。

また、呉市が戦争中にどれだけの空襲を受け、多くの人々が犠牲になったかを示す展示もあり、ここでもまた戦争の悲惨さを痛感した。
館内には、戦後の呉市が造船業で復興を遂げた歴史も紹介されており、「戦争のためではなく、人の生活のために技術が使われるべきなのだ」 というメッセージが伝わってきた。
🛫 広島空港へ、そして帰路へ
呉市をあとにし、広島空港へ向かう。途中のサービスエリアでお土産を追加購入し、広島最後の時間を噛みしめる。
レンタカー返却時に少し手間取るも、無事に空港へ到着。帰りの飛行機は小型機で、モニターがなかったため映画は見られず。「じゃあ、寝るしかないな……」と機内で目を閉じる。
離陸後、機内アナウンスが流れる。

「当機は広島空港を離陸し、まもなく降下を開始いたします」
え、もう? 広島から羽田って、こんなに近かったのか。あっという間に東京の夜景が見えてきた。

🌟 旅の終わりに思うこと
今回の広島旅行は、観光地巡りとしても充実していたが、それ以上に「戦争とは何か」を深く考えさせられる旅だった。

教科書やテレビで知っていたつもりだったが、実際にその場所に立ち、歴史の痕跡を見て、声なき証言に耳を傾けることで、より現実として受け止めることができた。
広島は、美しい景色と美味しい食べ物だけでなく、戦争の記憶と平和の大切さを学べる場所 でもある。
ただ観光するだけでなく、「知る旅」 をするなら、広島は間違いなく訪れる価値のある場所だと心から思う。
2日間の旅は終わったが、ここで感じたことは、ずっと心に残り続けるのではないかと思うほどインパクトのある旅でした。